今回は、管理会計がどうしても苦手である、という方に向けて記事を書いてみたいと思います。
以下の記事に、管理会計論の勉強法について一通りまとめておりますので、まずはこちらをお読みになってからの方がいいかと思います。
会計士試験においては、特に最大の難関である短答試験の突破においては、極端に苦手な科目があると、著しく短答突破の確率が下がる傾向にあります。
論文は、短答突破の能力さえあれば、多少の得意不得意の差が出てもなんとか乗り切れる可能性があります。
しかし、短答においては、得不得意の差は非常に合否にシビアに影響します。
その中でも、私と同じように、管理会計を苦手として苦しんでいる場合に取りうる対策を、実体験を踏まえて紹介します。
最終的には、以下のような成績となり、短答でかなり良い結果を得られました。
論文では、おそらく計算ミスをしてるのではないかと思いますが、管理会計(第一、第二)は不本意な結果に終わっています。(財務会計がかなり良かったので助けられています。)
(短答)81点
(論文)会計学 55.41(523位)(第一:15.15 第二:28.2)
成績の証拠は以下に載せています。
原因分析
まずは、自分自身が管理会計論のどの分野が苦手なのか、なぜ苦手なのか、どうして得点できないのか、そういう自己分析をすることが大事です。
自己分析は以下のように行います。
①苦手領域の特定
②なぜ苦手なのか原因を探る
③問題で得点できない原因を探る
④原因解決のための策を練る
⑤計画を立てる
私の場合、あてはめると、以下のような感じでした。
①苦手領域 | 特殊な総合原価計算、管理会計(財務分析を除くほぼすべての計算問題) |
②なぜ苦手なのか原因を探る | ・ 総合原価計算:指示が多く複雑になると下書きへの反映に手間取る ・ 管理会計:本試験特有の指示出しに戸惑うことがある |
③問題で得点できない原因を探る | 問題の指示内容をすぐに咀嚼できないのは、本質を理解していないこと原因である。そのため、計算を組み立てるまでの時間がかかり、時間切れとなる。 |
④原因解決のための策を練る | 理論的な理解を深める。答練や問題集で、計算の下書きへの反映を反復訓練する。 |
⑤計画を立てる | 1冊の問題集のすべての問題に対して、ストップウォッチで測って解く。時間内に解ききれなかったら、同じ問題でよいので、速くなるまで解く。同じ問題の反復だと、解き方を覚えてしまうことがネックだが、それを補うためにも、理論的な裏付けを必ず同時並行で行う。 |
さて、こうした経験から、これから書くような教訓を得ました。
時間の使い方
短答までは、少なくとも60%取れるレベルまでは時間を割かなければいけないと思います。
このレベルに達するまでは、他の科目とのバランスとか言うような段階ではなく、時間を投下する必要があります。
苦手科目を克服するための時間の使い方ですが、2,3日の間、同じ科目、同じ単元だけをひたすら勉強し続けるということが効果的です。
もっというと、「今週は総合原価計算の全パターンを極める週間!」というように、1週間くらいは、同じ科目・単元をやってもいいと思います。
言い換えると、投下する時間を、様々な科目・単元に分散させないことです。
そうすることにより、一つの単元の理解を徹底的に深め、問題の解き方を脳に染み込ませることができます。
これは、非常に苦しいやり方ではありますが、修行だと思って、徹底的にやり込むことで、確実に習熟の効率を上げることができます。
得意な科目は、意外と細切れでやってもうまく行ったりするものですが、苦手な科目はこのように、自分を追い込むようなやり方をするのがよいです。
勉強方法
会計士試験の勉強全般に言えることですが、管理会計は特に、単元ごとに「計算」と「理論」を同時にやることが非常に効果的です。
計算問題の場合、問題文の情報を「解き方のパターン」「下書き」にあてはめて機械的に素早く解くスキルは非常に大事です。
しかし、理論的な裏付けの理解がないと、ちょっとした問題文の指示のクセが変わっただけで、急に解けなくなったりすることがあります。
これは、原価計算分野でも管理会計分野でも言えることですが、特に管理会計分野で顕著だと感じています。(ただし、人によって感じ方は違うと思います。)
試験問題を見たときに、ケースバイケースで対処していくことが多いのが、どちらかというと管理会計分野の印象があります。
原価計算も、時々悪問や指示が特殊な場合もありますが、それは受験生全員にとって同じ条件です。基本的には、ある程度訓練してきた練習のパターンで対応できる場合が多いと思います。
受験戦略
ある程度諦める
他の圧倒的な得意科目が一つまたは複数あるならば、管理会計科目をある程度諦めるという戦略があります。
50%程度を下回らないくらいに得点する力だけつけておいて、あとは他の科目に時間を割くという方法です。
個人的には最低60%は目指したいところですが、短期合格などの戦略の一環でこのような方法を取る場合があってもいいのかなとは思います。
ただし、2年から3年を超える期間での合格を目指すならば、諦めるという戦略はとらない方がいいと思います。
単元ごとに強弱をつける
また、その際には、単元ごとに強弱をつけることが大事です。
たとえば、
総合原価計算は比較的習熟しやすいから、60%取れるようにするが、
管理会計の予算管理は、基本がわかる程度にして、計算の深追いはしない、
といったように。
これは、その時々で試験問題のトレンドがあるので、自分の得手不得手と試験傾向を必ず見比べて戦略を作る必要があります。そこは予備校の分析を当てにするべきです。
一方で、総合原価計算がどうしても苦手だから捨てる、という戦略をとってしまうと、かなり難しいと思います。管理会計論を半分捨てるようなものですから。
(例えば、別の科目で聞いた話ですが、大昔の会計士試験で、財務会計の連結会計を丸々捨てて受かった人がいたようでしたが、時代は変わり、現在の企業環境において、連結会計を捨てるというのは自殺行為かと思います。)
インプット方法を変えてみる
相性のよいインプット方法
管理会計論が苦手である場合には、そもそもの理解が覚束ない原因が、教材や講師との相性、という場合もあるかと思います。
私個人は、この管理会計に非常に苦労しました。
これは個人的な得手不得手の問題であり、それゆえ、良い先生の講義を聞き、良い教材で勉強することを特に求めた科目でした。
この点、私の管理会計論の克服の過程においては、この講師の名前だけは、出さないことは難しいと思っていました。
それが、会計士受験界では有名な、池邉宗行講師でした。
ここで、大事なので、このブログのコンセプトを共有させて下さい。
この記事のコンセプトに記載している通り、私は特定の予備校の名前、予備校講師の名前を一切出さず、教材や答練の名称についても、一般的な呼称を使って書いています。
理由の一つは、私自身、予備校を複数経験しており、最後は科目ごとに予備校を変えていたためです。
その経験から、基本的に有名どころの予備校であれば、正しい勉強法で行えば、差はそれほどない、という考えに基づいています。(そのため、特定の予備校の良し悪しを紹介することも全くしていません。)
理由のもう一つは、私の合格のタイミングから時間が経っても、普遍的に役立つような記事を書くことを意識しているからです。
もちろん、この管理会計においても同様です。
しかし、それをもってなお、この講師の講義と教材で、私の管理会計の結果は間違いなく影響を受け、短答で80%を超える得点に結びつき、ひいては受験戦略全体に良い結果をもたらしました。
私のこの科目への苦労を考えたら、短答で80%を超えるなんて、全く夢のまた夢でした。
その意味で、私は池邉講師に心から感謝をしており、単に会計士試験の1受験科目へのアプローチの仕方、というだけにとどまらず、プロとしてのスタンスにも感銘を受けたのです。
池邉講師の表現と説明は非常に首尾一貫していて、講義中の発言、テキスト、答練の解説、そのすべてで、繰り返しリフレインされて、その一貫した説明に触れることができます。
そのため、気づけば、問題を解いている時に、彼の言葉・表現がそのまま想起できるようにまでなっていました。
もちろん他にも良い講師はいると思いますし、相性の問題もあると思いますが、本当に悩んでいるのでしたら、彼に当たってみるのは一案かと思います。
そもそも、非常に評価の高い人気講師ですので、相性が合わないというのは少ないのではないかとは思います。
私が受講していた時とは違い、今現在はこちらの受験予備校にいらっしゃるようなので、ご興味あれば当たってみてください。
》CPA会計学院
当時からは、信じられないかもしれませんが、この管理会計論の受験勉強が役立ち、
実務において、製造メーカーの内部統制の構築支援や、製造メーカーの経理部の管理会計(予算管理や予実分析、投資意思決定、取締役役会報告)の業務支援を行うまでになっていました。
そして、実務でこのような経験をできるのは非常に感慨深いものでした。
地獄のようにこの科目に苦しめられた受験生当時からしたら、全く信じられないような経験ですが、この知識で対価を得られるほどにまでなっていました。
これは本当に池邉講師のおかげ以外の何物でもありません。
単科受講で予備校を掛け持ちの注意点
ここで、単科受講で予備校を掛け持ちする場合の注意点を書いておきます。
基本的に、テキストと問題集と講義は一種類に絞るのが勉強の鉄則です。
何を反復用の教材とするのか、練習用の解き捨ての答練とするのか、しっかりと決めておかないと、限られた時間の中で消化不良となってしまい、習得に非効率となります。
答練は、練習のための解き捨てであれば複数予備校をやってもよいとは思います。
時間と効率だけは気を付けて、掛け持ちをするようにしたいところです。
まとめ
苦手科目の勉強時間の使い方、勉強方法、インプット方法について紹介してきました。
私はこの科目の習得に時間をかけてしまいましたが、正しい勉強法、相性のよいインプットの仕方ができれば、克服できる余地はあるということを示せたのではないかと思います。
以上、参考になれば幸いです。