今回は、何度も試験に落ち、これからどうしたらよいか途方に暮れている方、
もうすでに撤退を決めようとしている方に向けて、書いてみたいと思います。
私自身も、会計士試験の短答式に何度も落ち、ほとんど撤退まで考えたこともあります。
自分の選択した人生ではありますが、プライベートで大きな出来事もあり、試験勉強を続けるべきか、非常に悩みました。
そして、非常に精神的に追い込まれていました。
そんな私の経験から、会計士試験を撤退することが、人生の選択の一部として、どんな意味をもつのか、考えるきっかけを与えられたらと思っています。
撤退するも、受験を続けるも、非常に強い覚悟が必要であるということです。
本記事が、気持ちの整理と進路や就職の選択のための一助となるかもしれません。
また、もし会計士を辞めることになる場合に、どんな選択肢や進路があるのか、ということも考えてみたいと思います。
試験を続けるも続けないもただの「選択」に過ぎないということ
私のスタンスとして、会計士になる選択も、会計士を一度は目指したけれども、結果的に辞める選択も、
どちらを取ったとしても、それは各人の最善の「選択」であって、これから先の人生の「成功」の一歩であるということです。
ここでいう、人生の「成功」とは何か?
それは、自分らしく、自分の得意なことや好きなことをして、結果的に人生が充実するという事です。
会計士は、そのほんの小さな一要素に過ぎない事を認識しておかないと、どんな人生であっても好転しないと考えています。
そのことを一番肝に銘じておくべきです。
短答に1問差で3回落ちた話
私の場合、結果的に運よく合格して、会計士として働いていますが、
会計士試験の短答式に何度も落ち、ほとんど撤退まで考えたこともあります。
私の場合、新卒で入社した会社を辞めて会計士試験を目指し、その間に個人的な大きな出来事もあり、押しつぶれされそうなプレッシャーの中で、短答試験を何度も落ちました。
論文試験は一度で受かりましたが、短答試験には、一問差で3回落ちました。
3回目に落ちた後のその後の一ヶ月間、体が動かずなにもできませんでした。
影響は体にも出て、突然、全身がひどい皮膚炎になりました。
いい加減働けよ、と自分の中の別の自分がささやきます。
良かったのか悪かったのか、それは今でも分かりませんが、結果的には試験勉強を続けるという「選択」をしました。
私の中で、落ちた試験結果から、まだチャンスがあると判断したからでした。そして、受かった後に、自分なりのキャリアプランがあるのではないかというイメージできたからです。
その後、次の短答式試験では、ボーダーラインに対して余裕のある得点比率でパスすることになります。(ボーダー70%に対して77%取得)
でも、それは不思議と、試験勉強を辞めて、別の道を選ぶという事と、ほとんど同じ意味のように感じていました。
それくらいの境地に立ったうえでの、続行という決断でした。
あるいは、もしかしたら、紙一重で、試験勉強の続行ではなく、別の道を選んでいたかもしれません。
要は自分を適材適所にしてあげるということ
公認会計士試験ごときで、自分という人間を価値づけないということが何よりも大事です。
このような、とても当たり前で、大事なことを、長い試験勉強の中で忘れていきます。
ただ、それは仕方のないことで、かなりの労力と覚悟を持って臨んできた会計士試験の勉強の中で、受からない自分というものを受け入れられなくなっていくからです。
本当に大事なことは、自分自身を適材適所にしてあげるということです。
それが一番自分という人間が喜ぶことです。
撤退の判断基準
会計士試験を続けるか、撤退するか。
それは簡単な決断ではありません。
しかし、「撤退」という文字が少しでも頭に浮かんでしまったのなら、現実的に考えていく必要があります。
人それぞれ、状況が異なりますので、判断する際のポイントを挙げてみます。
・現在の年齢、在学中か、卒業後何年かたっているか。
・既卒の場合、職歴がない期間の年数
・直近の本試験の成績や模試の出来具合を分析する(分野ごとに登るべき山を認識し、登り続けることができるかどうかを分析する)
・自己分析(会計が好きだったか、会計の勉強が向いていると感じたか)
・職歴がない場合、撤退後にセーフティーネットとなるような技能を証明できる検定を持っているか(税理士科目合格、日商簿記、その他会計系以外も含む)
・受験を続ける金銭的な目途が立つかどうか
・上記を踏まえて、まだ1年続ける価値があるかどうか、リスクがどの程度あるかどうか
受験勉強を続けるなら覚悟すべきこと
やれば受かる試験であることは間違いないことです。
ただし、実際には、その「やれるか」が非常に難しい問題なのです。
たとえば、これまでやってきた以上に、机に向かって、できない問題をできるようにする時間を取ったり、苦手な分野、得意な分野を分析して、得点する上での戦略を深く考えたり。
これまでうまくいっていないのであれば、なぜうまくいっていないのかを自己分析する必要があります。
そして、何か流れを変える必要があります。
問題はどこにあるのか。なぜ受からないのか。ちゃんと謙虚に考える必要があります。
1年とか2年足らずでサクッと受かっていく人がいる中で、自分ならやれると変な勘違いをしているメンタリティーが問題しているかもしれません。
あるいは、単純に勉強のやり方が間違っている可能性もあります。
とにかく徹底的に何に問題があるのか、謙虚に自分と向き合う事から始める必要があります。
他人や講師に相談することも大事ですが、最終的に、自分のことを理解しているのは自分しかいないのですから。
合格以上のことを目標にする必要がある
何度か落ちても、まだ受験を続ける場合、目標を見失いがちになります。
もちろん合格することが目標なのですが、時間をかけていると、不思議と、合格するという目標に対して、毎日のタスクに分解してスケジュールに落とし込めなくなるのです。
そこで、具体的に毎日のタスクの刺激になるような、明確で強烈な目標を置く必要が出てきます。
ここで目標とすべきは、「どんなボーダーでも余裕で合格できる得点率」です。
私は、ボーダーギリギリを狙う戦略は、短期合格を目標にするときの戦略だと思っています。
もうすでに一通り学習をして、何回か試験を受けている場合、ボーダーギリギリを狙う戦略は間違っていると考えています。
とはいえ、9割を目指せ、ということではありません。
そこまでいくと、逆に、著しく学習が非効率になる可能性がありますので。
実現可能な範囲で、余裕のある得点ということで、例えば短答式であれば、全体として8割前後くらいは目標にしたいです。
試験はみずものですので、結果的に、難易度やボーダーがどうなるかは誰にもわかりません。
しかし、何度か試験を落ちていて、かつ、受験を続けるという選択をするのであれば、あえてそういう厳しめの設定をしないと、覚悟を持てず、永遠に受験生を続けることになります。
それくらい自分を追い込んで、勉強をするということが、受験を続けるということの覚悟です。
厳しいようですが、既に何度も失敗しているのに、同じ目標、同じやり方では、また結果も同じになるだけなのです。
これができないのであれば、受験を辞めた方が、よほど自分に合った豊かな人生を送れます。
これは身をもって言えます。
働きながら続ける場合
一度どこかの会計事務所や監査法人のスタッフ(監査トレーニー制度)として籍を置きながら、合格を目指すのはありです。
金銭的な目途が立たないけど、どうしても会計士試験を続けたいと考えている場合、この監査トレーニーは、結構オススメです。
私の所属していた会計事務所でも、そういう方がいらっしゃいました。
特に、既に学校を卒業していて、無職である状態や、職歴がない場合には、そのような状態が長く続くことは、この日本社会では非常にマイナスに見られます。
日本は、やはり、いまだに新卒一括採用の国で、その道から外れているということを結構重視するからです。
個人的にはどうでもいいのですが、世の中からそう見られるという現実はあるので、
無職で受験専念するよりも、どこかにアルバイトでもいいので就職した方がいいでしょう。
試験を続けるにしても、撤退することになっても、何らかの実務経験があることは、のちの自分を救ってくれることになるはずです。
撤退すると決めたなら
もし、受験を辞めるという選択を取るのであれば、それは素晴らしい選択です。
悔しさもあるかもしれませんが、本当に自分を客観視して、現実を受け入れ、別の道で頑張ろうと決めることは、並大抵のことではありません。
逆に、それができるということは、必ず別の分野で、うまくいくと私は思います。
冒頭にも書いたように、自分を「適材適所」にしてあげることが、一番人生を楽しくできる方法だと思っているからです。
会計士になるから幸せになるのではなく、自分の好きなことや得意なことが人生が充実させるのです。
うまくいかないと思ったことを適切なタイミングで「損切り」できる人は、トライアンドエラーの試行回数を増やすことができて、結果的に成功しやすくなると思います。
会計士になった人でさえ、結果的に向いてないと感じ、まったく別の道に進む方は多いです。
そういう判断をできる人が最終的に、充実した人生を歩めると私は感じています。
撤退後の進路について
とはいえ、なかには、撤退した後の進路について頭を悩ます方がいらっしゃるかと思います。
そして、職歴がある場合と、職歴がない場合とでは、撤退後の進路の考え方がかなり変わってくるでしょう。
職歴がない場合でも、卒業の年数などが考慮される場合があると多いと思いますが、就職する手段はいくらでもあります。
ご自身がこれまでやってきた会計士試験の勉強というものはゼロになるものではありません。
その点を含め、人それぞれのご経験や強みなどを元に、いくらでも働き口はあるものです。
そして、それだけでなく、今のネット時代、稼ぐ手段はいくらでもあります。
もし問題があるとすると、プライドが邪魔する可能性です。
ただ、会計士に限らず、あらゆる分野で、稼ぐにはスキルが必要です。
そのためには、まず自分自身の強みや性格をよく分析することが非常に重要です。
そのうえで、自分自身が次に登るべき山(スキル)を見極めることが大事です。
・そのうえで、身に付けるべきスキルを選ぶ
その時に、自分自身が、会計士試験を辞めたという事実、辞めた理由というものが、とても役に立ってくると思います。
会計系の進路を選ぶ
会計士受験を辞めたものの、会計や経理が好きだと思うのであれば、会計系の道を別の形で歩んでもよいかと思います。
会計系のスキルでいくのであれば、日商簿記2級以上、あるいは、アピールという意味では日商簿記1級レベルを持っていると印象がいいと思います。
・監査法人や会計事務所の補助スタッフ
・一般事業会社の経理部(上場企業)
・オンライン秘書系
会計系の就職には、MS Japan、レックスアドバイザーズのような会計系のエージェントで相談に乗ってもらうのがよいと思います。(私もお世話になったことのあるエージェントで、キャリアカウンセリングは無料でやって頂けました。)
会計系以外の進路を選ぶ
会計以外の進路を選ぶ場合は、正直、それぞれの興味関心や得意不得意に応じて、なんでもありだと思います。
ただ、個人的には、大きく二つをオススメしておきます。
2. ネット起業
1.の就職の場合には、リクルートエージェント、マイナビエージェント、dodaのようなエージェントに相談に乗ってもらうのが手っ取り早いと思います。(私もお世話になったことのあるエージェントで、キャリアカウンセリングは無料でやって頂けました。)
また、就職の準備などには、こちらの記事もご参照ください。きっとお役に立てると思います。
一方で、ネット起業という手もあります。
どこかに就職するだけが道ではないという事です。
職歴がない場合や既卒で年数がそれなりに経っている場合には、会計以外の分野で就職するということのハードルを考えたときに、ネット起業は個人的にはオススメです。
なぜなら、ネット起業は初期投資やコストを抑えて始めることができるからです。資金調達の必要はないと言ってもよいでしょう。
そして、適性がフィットすれば、ネット起業には、会計士になるよりも稼げる可能性すら秘めています。
たとえば、以下のようなスキルが一般的にはよく挙げられます。
・コンテンツ販売
・Web制作系(デザイナー、プログラマー)
・ライター
・せどり
・オンライン秘書 などなど
ただし、稼げるレベルのスキルを持つには、やはりそれなりのスキル習得に時間がかかります。
それには、独学もしくはスクールに通うという方法があります。
(※注意:高額な情報商材やスクールの見極めは慎重に。)
たとえば、何らかのアルバイトをしつつ、ネット起業のための準備をするなど、いろいろなスタイルがあると思います。
いずれにしても、どの分野でもスキルを身に付けるためには一定期間の勉強と、実績を積み上げていてく必要があります。
最初は小さな実績からで構いません。自分で稼ぐ、という自信をつけることが大事です。
その点、今は非常に恵まれています。
例えばランサーズやクラウドワークスといった大手のクラウドソーシングサイトで、実績を積んでいくことができます。
ぜひ、自分の向いている分野、手にしたいスキルを調べつつ、どんな案件があるのか見てみてください。
きっと新たな発見があるはずです。
まとめ
以上、会計士試験を撤退することを考えたときに、どのようなマインドでいるべきなのか、そして、どんな未来があるのか、書いてきました。
これは、私自身が撤退を考え、追い込まれていた時に考えていたことです。
どんな決断をしても、考え抜いた結論なら、きっとうまくいきます。
会計士に限らず、皆さまの人生がうまくいくことを願っています。