会計士試験の科目別に、短答対策から論文対策まで、私自身の勉強記録をもとに、勉強方法をまとめています。
今回は租税法。論文試験にのみ存在する科目で、多くの受験生が勉強時間の不足から手薄になりがちです。
ただ、この科目、一定の練習量を超えると急にできるようになってくる性質があると感じます。しかし、そこまでが苦しい科目です…
そして、かなり、実力差が出やすい科目になっているのも事実です。
というわけで、今回の租税法については、次のような問題を抱えている方に向けて書きたいと思います。
・具体的な勉強方法がよくわからない
・法人税法以外をどれだけ勉強したらよいかわからない
・理論の対策がよくわからない
まずは租税法の成績だけ抜粋します。
私の場合、租税法はさえない結果に終わりました。
第1問のこの点数は結論を外しているかと思います…。第二問は消費税が難しかったのもありますが…取りこぼしが多かったようです。
論文は上位1/3の順位で一発合格しているので、全体的な戦略としては、間違っていなかったと思いますが、
もし2回目に受けることがあったとしたら、租税法にかなり時間を割いて対策していたと思います。
2014年度に公認会計士試験に合格したときの成績表と勉強法まとめは、こちらからどうぞ。
論文試験の基本的な戦略
法人税法、消費税法、所得税法の三法が対象になります。
とにかく租税法は手を動かして、問題を解きまくることです。
立法の趣旨や、制度の背景を理解することも重要で、それによって、覚えることが減り、学習が効率化するのは間違いないのですが、
とはいえ、とにかく「習うより慣れろ」という性質の方が強い科目だと感じています。
「法人税」は、問題全体の半分を占めるため、皆ができる論点は当然落とさないようにしておき、その次のレベルくらいまでは手堅く押さえておく必要があります。
「消費税」は、意外と皆さんしっかり対策している印象で、基本を落とさないように、難化の可能性まで踏まえて、基本的な部分で、あいまいな点がないように覚えておく必要があります。
「所得税」は、時間の制約から手薄にする人もいるようですが、基本的なところを押さえれば、意外と得点しやすいので、手を抜かずに必ず基本的な問題を解けるようにしておくべきです。各所得を個別に押さえる必要がありますが、総合問題形式でも押さえるべきです。
また、理論と計算を合わせて押さえていくことが特に効率的な分野です。
ということで、三法の勉強法を具体的に振り返ります。
租税法の勉強法まとめ
※三法すべて、やり方は同じです。
②ひたすら問題集で慣れる。テキストへ戻って確認。これを根気よく繰り返す。ここが勉強の中心。
③問題集で慣れたら、論文答練を学習の中心に据えて、逐次テキストに戻って確認。以後、直前まで繰り返す。
④直前期は、答練のあいまいな論点を潰して、テキストに戻り不安な箇所を押さえる。
法人税法について具体的に
法人税法においては、問題で問われることがなかったとしても、計算過程からきちんと押さえておく必要があると思います。
学習の順序としては、まずは計算過程を完璧にするよりも、最終数値を解答できることを目標として、徐々に計算過程まで記憶できるようにしていくのが効率的かと思います。
ただし、なかには計算過程を積極的に覚えることをしないと始まらないものもあります。例えば、中小法人の貸倒引当金、寄付金、試験研究費などです。
私の場合には、最初は、計算過程を自分なりに覚えやすいように、かつ、意味が変わらないようにアレンジしたりして、何度も書いて覚えていました。
とにかくボリュームが多く、試験問題でも半分を占める部分ですので、あまりムラのないように対策する必要があります。
所得税法について具体的に
所得税は、基本さえ押さえれば、割と得点しやすいと考えたため、私の場合、攻めの位置づけでした。
この戦略は、人によっては時間制約的に難しいかもしれませんが、個人的には、所得税は意外と得点しやすいので、基本は押さえておくべきと考えています。
また、所得税に関しては、法人・消費よりも理論との関わりを強くして学習していました。
条文も積極的に引きながら、どこに何が書いてあるかをかなり覚えようと努めました。62条とか51条とか、すぐに出てくるようにしていました。
そのため、納得のいくまで条文やテキストを熟読し、分かりにくいところは自分なりにまとめてテキストに書いて、試験まで何度も眺めていました。
これは、結構、所得の勉強で時間を使った部分です。
また、すべての所得項目について、穴のないように押さえました。
中でも特に、譲渡所得は最も重視し、答練レベルは最低絶対に押さえ、その精度を追求しました。
さらに、総合問題形式にも対応できるように、答練レベルでは最終の納付税額まで合わせられるように訓練をしました。
1. 各種所得
2. 課税標準
3. 所得控除
4. 課税所得金額
5. 納付税額
この流れを答練の総合問題を使って何度も何度も訓練しました。
消費税法について具体的に
消費税については、まず全体の計算の流れを覚えることから始めました。
これには簡単な総合問題をまずは繰り返しました。
以下の流れを徹底的に叩き込みました。
1. 納税義務の判定
2. 課税標準額
3. 消費税額
4. 控除過大調整(取り立て益)
5. 課税売上割合
6. 控除対象仕入税額
7. 売上げ返還
8. 貸倒れ
9. 差引
10. 中間納付
11. 納付
これをまず、解き始めに簡易的にメモ書きしました。
それをベースに、売上げは、
1. 課税売上
2. 輸出免税
3. 非課税
の分類メモ書きをし、仕入れも、
1. 課税売上のみに要する
2. 非課税売上のみに要する
3. 共通
と問題の情報をできるだけ早く正確に分類してメモ書きができるように訓練を積みました。
それができるようになると、各々の項目について基本から応用へと個別論点的を徐々に覚えていきました。
これを答練ベースに行って、テキストに戻って確認するという流れです。
消費税は、皆しっかりやると思うので、多少細かいところまできっちり覚えるべきだと思います。
例えば、控除対象仕入の調整対象固定資産や簡易課税の基本的な部分も解けるようにしていました。
消費税について、法人税と所得税の学習法と少し異なっていた点は、かなり過去問を解いたことです。
消費税については平成18年以降の過去問はすべて解きました。
理由は、簡単な時と難しい時のレベルの幅を知りたかったこと、難化した場合のイメージづけ、知識の確認です。
消費税は年により雰囲気が全く異なると感じたため、いろいろなタイプの問題に触れて初見慣れをしたいと考えましたが、これはよい対策だったと思っています。
実際、本番の時も、法人税のように、問題に慣れたような感覚をもって臨むことはできないような問題が出てきました。(それに少し難易度も高めでした)。
理論の勉強法まとめ
租税法は、法律科目ですので、企業法と同じように条文が結構大事です。
そのため、条文慣れにもかなり力を注ぎました。論点ごとに、理由・趣旨と条文をセットで押さえていきました。
ただ、試験で問われやすい条文はそれほど多くはないので、テキストや答練で問題になっている論点と判例をよく押さえておけば、試験対策上は問題ありません。
テキストや答練の論点を復習する際には、条文に逐一あたり、チェックマークも付けていました。本試験では、すぐに検索できることが重要だからです。
また、法人税、消費税、所得税で横断的に押さえるべき論点というのがあります。このあたりも答練や問題集をベースに対策すれば問題ないかと思います。
以上、租税法について、参考になれば幸いです。