会計士試験の科目別に、短答対策から論文対策まで、私自身の勉強記録をもとに、勉強方法をまとめています。
今回は、租税法と並ぶ法律科目である企業法。私の成績を抜粋します。
(論文)53.45(742位)(第一:23.35 第二:30.1)
短答論文ともに、もう少し得点したかった印象ですが、他の科目との兼ね合いを考えて、総合的に会計士試験の突破を考えたときには、割と効率的にできたのではないかと思います。
論文試験では、問題が比較的簡単でした。高い精度が求められたためか、私の場合は第1問で得点を伸ばすことができず、自信満々で答案提出して来たにもかかわらず、さえない結果となりました。
さて、今回は以下のような悩みにお答えできればと思います。
・条文の使い方がわからない
・覚えることが多すぎて、どうしたらよいかわからない
・財務会計や管理会計の勉強が大事なのに、企業法の得点がなかなか上がってこない
そもそも法律ってなんのか、法律をどうやって使うのか、という考え方を持っている人が得意なのではないのかと感じています。
2014年度に公認会計士試験に合格したときの成績表と勉強法まとめは、こちらからどうぞ。
短答試験の基本的な戦略
短答の企業法については、正直、条文をたくさん覚えている者勝ちです。
しかし、そこが落とし穴で、では条文を細かく覚えていけばいいのか、テキストを片っ端から読み込んでいけばいいのか、といえば、それは非常に非効率な戦略です。
一通り、講義などでインプットして、「法律」ってこういうもんなんだ、会社法や商法ってこういう感じなんだとつかんだら、あとはアウトプット主体で良いと思います。それが効率的だと考えます。
アウトプットの教材は、①網羅的な問題集1冊と②予備校の答練だけで、それを反復するだけです。
あとは、テキストの問題に関連する箇所を読み、体系的に押さえるだけです。
一回で丸暗記することは非効率なので、何度も繰り返します。
このあたりの勉強の基本的なスキルはこちらの記事でご参照ください。
短答試験に向けてやったことまとめ
②短答問題集を完璧にする。
③短答答練を完璧にする。
勉強内容について具体的に
上述の通り、一通りインプットが終わったら、あとはアウトプット中心でよいです。
基本的に私は、テキストだけをひたすら読んで勉強するという方法で効果的かつ効率的な勉強をできるタイプではありません。
短答問題集、短答答練を解くたびにいちいちテキストに戻って該当の図表を「見て」いました。
「見る」だけで、その場でガッツリと積極的に暗記しようとは考えませんでした。
アウトプットを繰り返して、テキストに戻る、をひたすら繰り返せば、何度も同じページや図表を見ることになるからです。そしたら、自然に叩き込まれて行きます。
おぼろげな輪郭がだんだんとクリアになり、解像度が上がっていくように、知識の精度をだんだんと上げていきました。
私は、時々条文も当たっていましたが、短答の始めのころは、テキストを軸にした方が効率がよいと感じました。財務や管理などの重要で時間のかかる科目が他にある中で、企業法は一番時間を割けない科目になるかと思うので、条文を初めから覚えてやろうとすると、費用対効果が悪くなると思います。
慣れてきたら、条文は積極的に引くべきだとは思いますが、私の場合、勉強初期は、条文を見たからといって別に記憶の定着が進むようには感じませんでした。
企業法という法律の設計を条文で理解して、覚えていくという作業は、初学者にはかなり難度の高い学習法だと思っています。
テキストでは、その条文をかみ砕いて、体系的に整理してくれているので、記憶の定着にはテキストの使用をオススメします。
ただし、もし、短答のときにちょくちょく条文を引く習慣をつけていたなら、論文のときにもっと効率的な勉強ができていただろうな、と感じたのは事実です。そこは受かった後だからこそ思う感想ではありますが。
直前期について
直前期は、短答問題集と短答答練の何度も間違えた付箋の問題のみをザッとチェック。
それから、気になるテキストのページに付箋を付けていたので、主に図表を中心に見直しました。典型度の高い論点は、図表中のどこを問われてもいいようにしていました。
これで、よほど難化しない限り80%は確保できます。
実際、短答答練と不合格となった短答本試験では80%~95%の出来でした。
しかし私の場合、合格時は、なぜか80%を切ることになってしまいました…
(これについては、自己分析をすると、合格するためにより重要な財務や管理の方に時間を割き、全体的には得点することに対して効率化したと考えます。)
論文試験の基本的な戦略
会計士試験の科目の中で、短答と論文でもっとも勉強方法に段差のある科目は、企業法ではないでしょうか。
これは、法律科目に独特な論述形式があったり、法律特有の考え方があったり、条文にリファレンスするという作業が必要になるからです。
短答で条文を引きなれている人は、かなり効率的に論文の勉強を進めることができるはずです。
しかし、それは少数派ではないかと思いますので、論文の勉強語から慣れていけば大丈夫です。
会計士試験においては、「この論点が出たら、これを書く」のようにパターン化することが非常に重要です。
出やすいとされる典型的な論点を一通り押さえ、あとはそれをパズルのように使いまわして答案を作成することで、論文試験を乗り切ることができます。
勉強の基本スタイルとして、「アウトプット教材の反復」というスタイルをとりました。
費用対効果を追求した結果、会計士試験の本流ではない企業法に関しては、答練と問題集を押さえて、ここからでない問題は本試験では大きな痛手を受けることはないと判断し、このような勉強スタイルをとりました。
そのためにやったことは以下の通りです。
論文試験に向けてやったことまとめ
②論文問題集を時間の許す限り、繰り返し、完璧にする。
③テキストの論点を潰す。(論点の重要性によって強弱をつけて)
勉強内容について具体的に
論文答練を始めたころは、丁寧にテキストの該当箇所を予習して臨みました。
これは、企業法の論文での戦い方に慣れるという効果があったように思います。
答えがあらかじめインプットされている状態でも、答練中、時間感覚や答案構成に意識を向けることができたからです。
すべての問題について、復習時に行った勉強方法は以下の通りです。
・当たるべき条文を検索(これは必ず手を動かす)
・解答の流れをイメージする
・すぐに解答を「読む」
・書くべき内容・趣旨、条文の答え合わせ
ということを繰り返しやっていました。
その際、時々、テキストの図表などに戻って、短答のときの体系的な知識の確認を行っていました。
これは制度説明問題で生きました。
書き方講座
法律科目においては、最も重要なのが、答案の書き方、答案構成になります。
会計士試験の企業法も、法律の専門家が問題を作成している以上、法律科目としての書き方のお作法が求められます。
これは、会計士試験の他の科目とはだいぶ違う部分になると思っており、
書き方については、下記の書籍が大変参考になり、私の法律への向き合い方や答案力の土台を作ってくれました。
これで、法律とはなんのために存在するのか、という当たり前の話から、だからこそ「こう書くべき」みたいなところまで一直線に繋がり、まさに、腑に落ちました。
この本で学んだ内容をもとに以下のような答案構成を意識しました。
②その法的根拠の要件
③要件が曖昧、論点の存在などの問題点があればその指摘と規範定立
④あてはめ
⑤当請求の当否の結論
こうした「答案構成メモ」を作成しながら、反復しました。
何回か反復して慣れたら、メモまでは作らず、条文だけ当たるようにして、時間効率を上げていきました。
論文対策時には、条文はこまめに引きました。
私の中では、ここはかなり短答との違いを感じた点で、条文の検索力こそが論文対策の最重要課題でした。
「条文が引ける」ということがイコール、法律が使えるということの最初の一歩だということを、恥ずかしながら、段々と勉強が進むにつれて理解していきました。
あとは、条文に対応する趣旨をセットで押さえて、簡潔に書けるようにしていきました。
企業法などの法律科目の論文の解答でよく使われる「規範定立」について簡単に補足しておきたいと思います。
そもそも「規範定立」とは、平たく表現すると、
「法律の条文や、条文の解釈、判例等から規範(≒ルール・判断基準)を立てること」
になります。
規範(≒ルール・判断基準)を打ち立てた上で、問題文で示された事例や問いにあてはめていくということをします。
この規範定立を間違うと、論述の流れ、結論までのプロセスが一貫しないものになってしまったり、問題の本質的な問いに答えられないことになります。
直前期について
直前期は、答練と問題集の付箋を付けた問題と、「答案構成メモ」と条文検索を中心にザッとすべての問題を最終チェックする程度にとどめました。
なかなか法律科目の独特な部分に慣れるのに時間がかかることもあるかもしれませんが、苦手な方は参考にしてみください。
企業法は以上です。