会計士試験の科目別に、短答対策から論文対策まで、私自身の勉強記録をもとに、勉強方法をまとめています。
会計士試験の科目の中で監査論は、得意・不得意が分かれやすい科目ではないでしょうか。
そして、苦手な人も、得意な人も、なぜ、自分が苦手なのか、得意なのか、はっきりと自分のことを理解できている人はあまり多くはないのではないでしょうか。
それが、この科目の不思議なところだと、勝手に思っています。
今回の記事は、
・なぜ監査論が苦手で、どのような対策をしてよいのか、つかみどころがない。
・監査論が得意な人の考え方や学習方法を知りたい
という方に向けて、書きたいと思っています。
というのも、私は、なぜか、この科目が得意な方でした。
なぜ得意だったのか、この記事で勉強法を振り返る中で、結果的に解析できているような記事になればいいなと思います。
(結果、少し熱くなりすぎて、長文になってしまいました…)
(論文)64.95(35位)(第一:26.8 第二:38.15)
※論文式の2回の公開模試でも2桁順位。成績は高いレベルで最後まで安定することができました。
2014年度に公認会計士試験に合格したときの成績表と勉強法まとめは、こちらからどうぞ。
短答試験の基本的な戦略
短答の基本戦略は以下の二つです。
・監査基準および監基報の原文の理解と記憶
監査論については、短答と論文で少し勉強上のポイントとなる部分、力点が異なると考えています。
もちろん、短答と論文を問わず、監査論の幹となる考え方、基礎(後述)はまったく同じです。そこが最も重要で、ここをいかに正確に押さえているかが、この科目の得点力を左右します。
その上で、短答においては監査基準を完璧にし、かつ監査基準委員会報告書(以下、「監基報」)の内容を少しでも多く覚えていくことが大切です。
決して逆になってはいけないのは、監査基準や監査論の幹となる考え方を押さえずに、監基報の細かい規定にばかり囚われててしまう事です。
正直なところ、監基報の規定を覚えれば覚えるほど、短答に関しては、肢を切れるようになり、有利に戦えます。
しかしながら、幹となる考え方を押さえずに覚えようとすると、逆に非常に非効率となるだけでなく、短答での肢の切り方に迷いが生まれます。ここが監査論の非常に難しいところです。
この点を前提に、具体的に見ていきます。
短答試験に向けてやったことまとめ
②監査基準を完璧にする、前文をよく理解する
③監基報の原文の文言の理解と記憶を重視する
④短答答練で肢を切るスキルの練習→間違えた肢を監基報にあたってチェック
勉強内容について具体的に
説明のために、上記の順番を変えて、書いていきます。
短答答練を使って知識を確認したら、ほぼ1問ごとにテキストの該当箇所に戻って印をつけて読んでいました。
テキストに戻る理由は、問われた肢の周辺知識を確認することにありました。
ただし、自信のある知識についてはテキストに戻っていないです。
直前期には法令関連と倫理規則などの、記憶が特にものを言う知識を中心に覚えていました。
あとは、テキストのチェック箇所を、理解や知識の確認のために読み通していたという感じでした。
あまりガリガリやったということはないです。不安でしたが、キリがないので、覚えるべき重要規定を押さえただけです。
全体的には、監基法の理解と記憶が一番時間を使う部分でした。
とにかく、監基報の原文に馴染んでいくという作業です。
こう書くと、なんだか、暗記重視で枝葉の知識偏重のように聞こえるかもしれません。
しかし、私の中で、これは微妙に違います。その前提には、以下の2つのポイントが土台にあります。
②監査基準を完璧にする、前文をよく理解する
短答の肢は、ほぼすべてが根拠規定のある肢をベースに作られています。知っているか知らないかで、最終的には片づけられてしまう問題が大半なのです。
ですので、まずは、その根拠規定の原文を徹底的に読んで理解する、そして記憶する、ということが戦略的には最も重要な作業だと感じています。
しかしながら、よほど簡単な問題ばかり出ない限り、知識的に本試験のすべての肢に太刀打ちするレベルに達することは困難です。
そんな時に重要となってくるのが、監査論の体系となる「幹」となる考え方の理解です。これは私のイメージではフワッとした「監査とはこういうもの」という「雲」のようなイメージの理解のことです。
この「幹」とは、
- 証券市場における財務諸表監査の意義
- 二重責任原則
- 保証業務としての財務諸表監査の性質
- 監査要点の立証過程
- 重要監査手続き
- 監査報告書の意義
- 保証業務としての内部統制監査の性質
など…これらの思想の上に存在する手続きとしての監査というものの全体像のことです。
(※実はこれ、実務上も非常に役立ってくれる考え方です。)
では、これらをどうやって身につけるのか。
それはやはり、自分で監査基準・前文、監基報の「重要規定」の原文を読むことによって、理解の総体となる「雲」のようなものを自分の中に蓄積していくことだと考えています。
それは人によって少しずつ違った形となって蓄積されるはずなので、フワッとした理解のイメージを「雲」と表現しました。
冒頭にも書いたように、私はこの作業を特に意識しつつ、アウトプットしながらインプット教材へ戻るスタイルで勉強していました。
この「雲」のような理解があれば、短答のA・Bランクの問題はかなりの確率で正答することができます。Cランクの細かい規定の問題でも、その知識がなくても、肢を切れる可能性が高まります。
ただし、だからと言って、この「雲」の理解で、いつも難しい肢を切れるとは限らないのが悲しいところです。
そういういやらしい難解な肢も確かに紛れ込んでいます。
そこが、監査という科目の難しいところであり、一見捉えどころのない印象を持ってしまう部分だと思うのです。そういう時は、ある程度絞った後は、肢の雰囲気で決めざるを得ないことは多々ありました。
以上が短答までの学習内容です。
これを踏まえ、論文対策でさらに深掘ります。
論文試験の基本的な戦略
基本的には、短答までの戦略のうち、監査論の「幹」となる考え方を習得していることが何よりも論文では重要です。
その上で、その「幹」の考え方をいかに、質問に対して表現し、解答していくのか、という部分が論文の最大のポイントです。
また、監査論では、文章力や構成、表現の巧拙が点差に出やすい気がしています。
そのあたりも気にしながら、練習をする必要があります。
論文試験に向けてやったことまとめ
②論文答練で解答の実践練習をし、問題及び解説をセットで完璧に理解し、記憶する
③監基報の重要規定を中心に押さえ、本試験ですぐに検索できるようにしておく(実務寄りの規定も含む)
勉強内容について具体的に
監査論の幹となる考え方、制度の背景や趣旨などを徹底的に読み込みました。このあたりは理解に少しの曇りがなきよう、腹に落とし込みました。
答練に出題される問題のタイプは、
①基本的なことを直球で効いてくる知識確認型のタイプ
②実務的な内容や、ひねりの入った本試験に実践的なタイプ
の大きく2種類の問題があります。
どちらのタイプも、復習の時にはテキストの該当の章と監基報の重要規定に戻って読んで理解を深めていました。
監基報については、大体どこにどんなことが書いてあるのかを知っていることが、本試験で少なからず自分を助けてくれました。
書き方講座
解答の書き方について、少し補足します。
監査論の論述の仕方は、上記ゆえに、企業法の解答の型よりも幅があると思います。ただし、ある程度、型を持っているべきだと思います。
背景や意義、理由などを問われている問題の場合、私は、
(長めの論述)問題の背景→原則論・規範定立→あてはめ→結論
で書くことは多かったです。規範定立とあてはめを融合させることも多かったです。
ただし、問題に合わせて、規範定立やあてはめのところで背理法(例:「もし〇〇が正しいとすれば、●●という矛盾した結果を導いてしまう。だから〇〇は間違いである。」)などを使ったり、いくつか構成のパターンを持っていました。
企業法などの法律科目の論文の解答でよく使われる「規範定立」ですが、監査論での使い方を補足します。
そもそも「規範定立」とは、平たく表現すると、
「法律の条文や、条文の解釈、判例等から規範(≒ルール・判断基準)を立てること」
になります。
監査論では、「条文」の部分を「基準」「監基報」に置き換えて考えます。
つまり、「基準」「監基報」での考え方を使って規範(≒ルール・判断基準)を打ち立てて、その上で、問題文の事例や問いにあてはめていくということをします。
この規範定立を間違うと、論述の流れ、結論までのプロセスが一貫しないものになってしまったり、問題の本質的な問いに答えられないことになります。
監査論の論文試験の面白いところは、型にはまった「これしかない!」というような模範解答が存在しないこところだと感じました。
もちろん、聞かれていることに対して答えなきゃ点数は来ませんが、その表現方法や、書いていく時の視点に一定の幅があると思っています。ですから、それを上手に表現できる人の答案は得点が高いような気がします。(これはあくまで感想です。)
この表現力、というのは別にカッコイイ文章という意味ではありません。
問題の趣旨に対して的を獲ている表現、ということです。
まとめ
会計士試験の監査論は実務色が少なく理論寄りなので、なかなか勉強しにくい科目ではありますが、地道に根幹となる考え方の習得と基準に向き合えば、必ず明るい結果を得られると思います。
以上、参考にしてみてください。